「守備が軽い」「周りを見ろ」から上達させる 谷田部式 翻訳方法

守備が軽い。
周りを見ろ。
やりきれ。
打ちきれ。
顔が下がっている。
ガッツが足りない。
やる気がないように見える。

こうした言葉を受けたとき、選手が落ち込むのは当然です。
問題は、その瞬間から「次のプレーで何をどう変えればいいか」が分からなくなることです。

言葉が“評価”や“感想”のまま終わると、改善に必要な情報が残りません。
結果として同じ場面が繰り返され、指摘が繰り返され、自信だけが削られていきます。

必要なのは、反論でも我慢でもありません。
言われた言葉を、現象と指摘された問題点に分けて整理し、次にやるべき“練習方法”へ変換することです。
つまり「翻訳」です。

このページでは、その翻訳をご家庭でも回せるように、
順番と型をまとめます。

ポイントは、気持ちの問題にせず、情報処理の順番を固定することです。

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1 家庭内ルール 「抽象ワード」を改善ワードとして扱いません

まず、家庭内のルールを決めます。
次の言葉は、家庭では改善ワードとして扱いません。

守備が軽い/周りを見ろ/やりきれ/打ちきれ/顔が下がっている/ガッツが足りない/やる気がないように見える

理由は単純です。
そのままでは行動に変換できないからです。
行動に変換できない言葉は、努力の方向を示さず、自己評価だけを削りやすくなります。

家庭はメンタルの耐久テストをする場所ではありません。
必要なのは、次に前を向ける“具体化”だけです。

2 会話の順番を固定します 「現象→症状→処方」

親子の会話は、次の3段階に固定します。
これを外すと、話が説教に寄りやすくなります。

1 現象:事実を1行で言う
2 症状:なぜ起きたかを、体・視線・準備で言う
3 処方:次の1プレーで変えることを1つに絞る

2-1 現象は「短く」「主観なし」で1行

現象は短く、主観を入れずに書きます。ここが曖昧だと、症状がブレます。

例:ボールを受けて前に運べず、相手に触られた。
例:寄せたが、足が出せずにかわされた。
例:クロスが相手に当たった。
例:中央に上げたい場面で、ボールを失った。

現象が事実で言えると、親子の会話が「評価」から「整理」に変わります。

2-2 症状は4カテゴリに当てはめます

症状は、まず次の4カテゴリに当てはめます。多くの困りごとは、最初はこのどれかに収まります。

A 視線:見えていない(情報が入っていない)
B 体:重心・姿勢・足が出ない(体が間に合っていない)
C 置き所:トラップ位置・次に蹴れる場所に置けない(準備が作れない)
D 選択:判断が遅い・優先順位がない(何を先にするかが決まらない)

カテゴリが決まると、処方が作れます。カテゴリが決まらないまま「気持ち」へ話を移すと、改善が遠のきます。

3 翻訳辞書 監督の言葉を「症状」と「処方」に変えます

ここからは、よくある指摘を“処方”に変換します。
大切なのは、次の試合で変えるのは必ず1つに絞ることです。
複数を同時にやると、何も残りません。

3-1 「守備が軽い」

この言葉は評価として刺さりやすいですが、症状に落とすと整理できます。
代表的な症状は次の通りです。

・重心が前に落ちていて、足が出せない。
・闇雲に足だけ出す。
・相手に重心を預けてしまい、粘れない。
・一発で奪いに行って外し、次がなくなる。

処方は1つに絞ります。たとえば次のどれかです。

・足を出す前に半身を作り、相手の進行方向に体を合わせます。
・いきなり奪いに行くのではなく、まず相手の選択肢を消す寄せを優先します。
・足を出してつかまれるなら、足を出さない選択が正解になる場面もあります。出すタイミングを変えます。

「闘う」は結果であって手段ではありません。
手段(体の向き、距離、重心、足の出し所)が整うと、
同じ選手でも“闘っているように”見えるようになります。

3-2 「周りを見ろ」

この言葉は精神論にされやすいですが、
多くは視線カテゴリの症状です。
代表的な症状は次の通りです。

・ボールだけを見てしまい、景色が消えている。
・首は動いていても、情報が入っていない。
・見るタイミングが遅く、受けてから探している。

処方は1つに絞ります。たとえば次のどれかです。

・受ける直前に「最後の確認」を入れ、受けた後は触ることに集中します。
・最後に見た方向と逆を一度見る、というルールを作ります。
・蹴った人の顔とボールを同じ視界に入れる意識を持ちます。

周囲が見えていない状態は、
根性ではなく“情報の取り方”の問題として整理できます。
情報の取り方が変わると、判断の速さや落ち着きも変わります。

3-3 「やりきれ」「打ちきれ」

この言葉も評価に聞こえますが、症状に落とすと多くは
「置き所」または「注意の置き方」に集約されます。
代表的な症状は次の通りです。

・打つ前の置き所が悪く、振りきれない。手間が多い
・外す怖さで体が固まり、当てにいく。
・体の動きばかり気にして、狙いが消える。

処方は1つに絞ります。たとえば次のどれかです。

・体ではなく、ボールの行き先に意識を置きます。
・すぐに打てる場所に確実に置く
・置き所だけ整えたら、あとは振ります。

狙いが先に決まると、体は後からついてきます。
逆に、体の動きを先に意識しすぎると、動きが固まりやすくなります。

3-4 「センタリングが上げきれない」

上げきれないは、キックの強さの話にされがちですが、多くは準備の話です。
代表的な症状は次の通りです。

・相手方向にボールを転がして蹴っている。
・体が相手に向いたまま、ボールも相手に近い。
・蹴る前の準備(立ち位置・角度)がずれている。

処方は1つに絞ります。たとえば次のどれかです。

・自分と相手の距離が広がる方向に置き、離れながら上げます。
・トラップは利き足の斜め前、1歩で踏み込める位置に置きます。
・先に体の向きを作り、最後に置き所を決めます。

上げる動作そのものよりも、「上げられる状態を先に作れているか」を見てください。
ここが整うと、同じ選手でも上がり方が変わります。

4 一番傷つきやすい言葉 「やる気がないように見える」

この言葉は、選手にとって最も苦しい部類です。
ただし、性格の問題として扱わないでください。
正体は次のいずれかであることが多いからです。

・情報が足りなくて動けない。
・手段がなくて怖い。
・準備が遅れて間に合わない。

やる気の有無に見える場面でも、症状として扱うと処方が作れます。
処方が作れれば、前に進めます。

ここまで言語化できたら、もう改善は始まっています。
評価ではなく症状として扱えた瞬間に、やるべきことが見えるからです。

5 親子の会話テンプレート 3つで十分です

試合後の会話は、長くする必要はありません。次の3つで十分です。

1 今日言われた言葉を1つだけ教えて
2 その言葉が出た状況を教えて
3 その話の中で大体の推理ができるはずです。
その時に見ていたのは、ボール・人・スペースのどれなのか?など

これが守れると、会話は叱咤ではなく整理になります。親は消耗しにくく、子どもは次の一手だけを持って前に進めます。

6 最後に 迷ったら「カテゴリ」に戻してください

会話がぐちゃぐちゃになりそうなときは、4カテゴリに戻してください。

A 視線(見えていない)
B 体(重心・姿勢・足が出ない)
C 置き所(次に蹴れる位置に置けない)
D 選択(優先順位がない)

カテゴリが決まれば、処方は作れます。処方は1つに絞れます。1つに絞れれば、改善が積み上がります。

スタート診断では我々プロがこうした診断から構築していきます。
お気軽にご相談ください。

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